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ちょうちょみたいな、ちょうちょん


 蝶子・・・。ちょうちょん・・・・。
 春の日、菜の花畑に蝶がたくさん舞う暖かいポカポカ陽気の中で、君は生まれた。
 それで私はこのような名を付けたんだ。
 この二十数年間、この名を君はどう思ってきただろうか。
 確かにかに、珍しいと言えば珍しい変な名前だ。
 しかし、この名は君がその、あの時見た蝶の様に美しくなれ、という願いをこめて付けた名前なんだぞ。
 けれどもそのわりに、生まれたての君は何ともまあ、くしゃくしゃの。
 そう、あれはよく言うオサルさんみたいと言うか・・・。
 と、言うよりも。
 うん。あれはまさしく『青虫さん』みたいだった。
 この話をするたび、君はいつもふくれっ面してたっけ。
 でも本当だったんだぞ。

 そして、君はどんどん大きくなっていった。
 けど、他の子に比べて何とまあ野菜の好きな事、好きな事。
 かあさんもよく言ってたっけ。
「ホント。ちょうちょんは、ちょうちょの生まれかわりじゃない?」かって。
「やっぱり、『青むしさん』だあー」って。
 私も何となくそう思った。
 と、同時に自分なりによくもまあ、こんな名前を付けたもんだ、そのとおりじゃあないか、って思ったね。

 やがて、中学、高校へと君は進んだ。
 あの時、私はさびしかったんだぞ〜。
 何を言っても、な〜んにも返事は帰ってこない。
 いわゆる反抗期ってやつかな。 
 そんな君によく私は「お前は口がないのか!おい、何とか言ったらどうなんだ。
 まるで『さなぎさん』だな」なんて言った。
 覚えているかな? 

 ようやく少しは大人に近づいたかなと思ったのは大学生活も終わろうとしていた頃だった。
 徐々にさなぎの殻を破り、外面的にも内面的にもその美しさが表れてきていたように思った。
 そして就職。
 バタッ、パタ、パタッ。
 不慣れな羽を嬉しそうに、ぎこちなくばたつかせながら新しい、見知らぬ世界へと飛び立つ君。
 だが、その時・・・・。
 美しく舞う『蝶』。
 その姿に魅せられたか、網を持ちそれを追いかける少年が一 人。
 その少年に・・・・。
 ふぁさっ。
 あっと言う間に君は、君は呆気なくも捕らえられてしまった。
 これからだった。
 これからこそ、私の自慢の娘として少しでも側にいて欲しかったのに。
「お父様。私達、結婚したいんです」 
「−−−−−−−−−−−!」
 あの後、私は何がなんだか分からなくなってしまって。
 びっくりしてそのまま・・・・・・
 そのまま、倒れちゃったっけ。

 わが家に贈られた幸せの希望の明かり、『黄色いたまご』。
 『青むしさん』、『さなぎさん』時代を経て−−−−−−−
 過去の古い殻を脱ぎ捨てて、美しいその姿を見せ舞っていた 『蝶』は今、まさに私の手元を離れ遠いところへと去っていく。
 綺麗なかごに入れられて。
 綺麗?でも窮屈じゃないか?不満な事はないか?
 一人大空を  飛び、自由だった方がよかったのではないか?
 ああー。覚悟はしていたものの私は、私は・・・・・
 その時、かあさんが優しく私に言ってくれた。
「あなた。何を心配していらっやるの。何がそんなに不安なの?
 私もその昔。一人の少年に、菜の花畑で自由に飛び回ってた時、捕らえられた一人よ。
 そして・・・、幸せだった。
 もちろんその後も・・・。今も、幸せよ」 
 その一言にようやく私は落ち着きを取り戻せた。

 そう、そうなんだ。 
 その昔、私もあんな少年の一人だった。 
 君を想う者と私も同じ事をしてきたんだっけ。
 もう何も言わん。 
 後は一つ。ただ、幸せになってくれさえすればそれでいい。
 行ってこい、新しい旅立ちへ。二人で・・・、仲良く、元気に。
 けれども疲れた時にはいつでも戻ってこい。
 砂糖いっぱいの甘い汁を吸いに帰ってこい。
 私達はいつでも待っているぞ。 
 それだけが、私がちょうちょんにしてやれるたった一つの事。
 たった一つの・・・、生き甲斐だもの。 

 それより。今はとにかく、結婚おめでとう。

 ちょうちょみたいな、ちょうちょんへ
                                            − 父より −         
 



 『別に・・・』第2号の編集は私が担当しました。
 一応、編集担当は、テーマも考えなくてはなりません。
 ナカナカいざ考えてみると難しく、さて何にしようか?と、悩みながら道を歩いていました。
 するとひらひらと舞う、モンシロチョウが目に入ってきたんですよね。
 このゴミゴミとした都会の中、ビルの谷間をひらひらと舞う『蝶』。
 畑や自然のいっぱいのあるところでは、ごくごく当たり前の姿なのだろうけれども、春の強い日差しの中で見つけたそれは、
まるで都会という砂漠の中に、突然現れたオアシスのようでした。
 それでテーマが『蝶』ということになったんです。
 それにしても、これを書いている時、何か頭の中がみょうに歳がいっていて。。。
 なぁ〜んか、こんな自分の娘を送る父親の心境なんてものを書いちゃいましたね(笑)
 けれども、逆に考えてみれば、父親ではなく、若者として自分が相手側の父親のことを思ったらこんなものなのかな?
と、どこかで思っていたのかもしれませんね。

☆H3.6/1『別に・・・』第2号に掲載    


みやびやまちゃんの(^^)//と、いうわけ(再編集後記)
 いやぁ〜、コレこそなんか、かゆ〜い感じがしてきます(^^;;;;
 依然として、この逆の立場には至っていないみやびやまちゃんです。。。(T_T)

 それにしてもこの頃、 題名に凝ってまして(自分なりに)。
 ちょうちょみたいな、ちょうちょん? なんじゃそりゃ??
 小説は、マンガとは違い、ホント第一印象は『題名』にポイントが置かれますものね。  1999.6/6 

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